トライやるウィーク
トライやるウィーク
今年も、この季節がやって参りました。
幸真会が登録をしてから、今年で3年目。
初年には、女子児童がたった一人で参加してくれました。
一昨年のことなのですが、この時は丁度、
弊会の十五周年記念大会の準備時期と重なり、
お教室の訪問の他に、コーラス伴奏の見学、大会用の事務仕事、そして、
三味線の練習と演奏する機会など、カリキュラムの彩りには事欠かず、
大変充実していたと思います。
私も、事後の寄稿が出来たし、参加した彼女も満足そうでしたし、
卒業アルバムにも載ったり、記録ビデオとして残されたり・・・
これらの結果を残すことができたのは、
自身の「人材育成の理念」も去ることながら、やはり、
「中学2年生にいい思い出を残してあげたい」一念です。
今回のコラムは、
一定以上の成果を上げ、関西圏でも知名度の高い、
兵庫県教育委員会「トライやるウィーク」が、
どのようにして進められていくのかを、ご紹介しましょう。
まず、3ケ月程前の時期に担当教師が、
登録している団体や企業、商店等に、受け入れの打診をすることから始まります。
団体によっては、5日間全ての受け入れではなく、
1日や2~3日だけの場合もありますので、
なるべく5日全て過不足なく予定が埋まるよう、担当教師はうまくリストアップし、
児童がそれを選べるように準備するのですが、これは、大変な作業だと思います。
受け入れ側はあくまで善意で無報酬なので、
送り出す側は、それに甘んじて現場の業務に差し支えてはいけませんし、また、
日程的な条件が合わないからといって、学校側が無理強いするわけにもいかず・・・
余談ですが、
邦楽教育がなかなか実行に移し難い背景には、
こういった、現場担当の激務も一因ではないかと思います。
トライやるウィークの担当と音楽担当とが重なった教師は、
一体どうやって、邦楽教育の時間を割くのでしょうか?
それでも手前共は、日本人が邦楽をすることの意義を尊重したい思いから、
出来る協力は精一杯させて戴いておりますし、その一環として当WEBでは、
「手前勝手な押し売りはしません。まずはご相談を」
と、呼びかけているわけですが。
次に、日程が近づいてきて、児童の希望現場が決まってくると、
再度、教師は各団体へ連絡を取り、正式決定と依頼、詳細の打ち合わせに入ります。
服装は制服かジャージか、交通費は必要か、
持ち物に特別なものは要らないか、ウィーク中ポスターの張り出しは可能か、
PTAの巡回は受け入れ可能かなど。
その後今度は、指定した日時に児童自身が挨拶に訪れます。
これが、現場と児童との初顔合わせになるわけです。
そしてこの数日後、トライやるウィークが始まるのです。
(以下は幸真会での風景です)
緊張の自己紹介、ガイダンス、楽器との出会い、説明、そして練習。
お昼休みは、まるで自宅にいるかのような、ホスト家族との食事と歓談。
午後は、お教室を訪問してお稽古の様子を見学したり、
日にちによっては事務仕事をこなしたり、或いはひたすら練習に打ち込んだり・・・
そして、幸真会のトライやるウィークの目玉は、何と言っても、
老人ホーム慰問演奏会での、三味線披露です。
殆どは会主の演奏なのですが、この日ばかりは、メインは中学生です。
「たった4日で、さくらさくらが弾ける!」が、謳い文句なのですが、
実際、このようなことが可能かと思われるでしょう。でも、
彼らは見事にやってのけます。逆に言えば、
「やらせるのが指導者の腕の見せ所」なのです。
指導手法がシステマチックに完成されているからこそ、
また、彼らの能力を十二分に引き出せるコツを把握しているからこそ、
実現できるのです。
私は指導者として、
コチコチに緊張しながらでもしっかりと演奏している彼らの姿、
演奏が終わった時に惜しみなく送られる拍手を一身に受けている、
彼らの姿を見るのが、一番好きです。
その次の日は、三絃店への訪問です。
滅多に行くことのないお店の雰囲気、
和楽器に対する店主の意気込み、邦楽を取り巻く意外な事実など、
彼らにとっては何もかもが、驚きと勉強と感動になるでしょう。
昨日のご褒美として、ドライブの意味合いも兼ねたひとときを経て、
帰宅した後は、
和楽器が持つ意外なポテンシャルや、私自身の可能性や理想を紹介し、
午後はもう解散、幸真会のトライやるウィークは終了とします。
この次の週、彼らは終了の挨拶に見え、
ホスト側が寄稿を提出して、名実共に、トライやるウィークは完了し、
私は、心地よい疲労感と、この上ない達成感、そして喜びをじるのです。
トライやるウィークでは、手前共のような文化団体もそうですが、
殆どは、商店街やお店、会社、駅構内、銀行や郵便局、役所関係の一部から、
農場関係、アミューズメント関連などに至る、
実に様々な団体や企業が登録参加しています。
これらの方々は全て、ボランティアで児童を受け入れています。
日々の業務や仕事がある中での受け入れは、正直大変な負荷なのですが、
毎年継続してなさっておられる方々に共通しているのは、やはり、
「情熱があること」だと思います。それは、
事後の各団体の寄稿文を拝読しても、うかがい知ることができます。
また忘れてならないのは、パイプ役となる担当教師方々の努力でしょう。
ただ、予算や校風といった各学校の実情も様々で、
一概に「成果」とは言えない部分もあるそうですが、
普段は異なるそれぞれの世界の人間が、
ほんの数日でも接することで、新しい発見がある。自分自身への気付きもある・・・
そんな新しい風が吹く、私はいい企画だと思います。
幸真会はこれからも出来る限り参加して受け入れ、
子ども達に、いい思い出を作ってあげられるよう、
また、自身の指導手法をもっと磨いて将来に活かせるよう、
前向きに取り組んでいきたいと思います。