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日本民謡のワークショップを控えて

日本民謡のワークショップを控えて

 今月のスケジュール頁にもありますように、

「声を巡るワークショップ」第二回目は、私が日本民謡で担当させて戴きます。

今回のコラムは、そこに向けたお話しと致します。

 常々私は「演奏家ではない、指導家である」との自負から、

コンサート、賛助出演、賛助伴奏の類いより、

レクチャー、ワークショップといったものに比重を置こうとしてきました。

ただ、こういうキャラクターの人材が他に少ないため、

どうしても「演奏者」として見られがちだし、指導を声高にアピールすると、

「それは演奏だけでは食べていけない者の言い訳」としか捉えられませんでした。

現に、そういうったお仕事や依頼は今まであまりなく、

過去の毎月のスケジュール頁にあるように、

ごく少数、学校への講義などがありましたが、殆どといって良いほど、

演奏のお仕事が大半だったので、私としても非常にもどかしさが募っておりました。

 しかし今回は「ワークショップ」です。

最近聞かれるこの言葉は、

今まで私が目指してきた方式に、ピッタリと叶うものです。

「演奏」をデモンストレーションとして捉え、あとは観客の呼吸を見ながら、

限られた時間と条件の中で、一定の成果を挙げなければならないという、

正に「指導力」がものを言う世界だからです。

当初、発起人の今泉さんからのお呼びかけには、

ただ「面白そうだな」程度にしか認識しておりませんでしたが、

自分の中で当日の組み立てをしていくうちに、ある種、

「一世一代を賭ける」(大げさ)ほどに盛り上がっていきました。

 今回を迎えるにあたって、いくつか工夫した部分をご紹介していきます。

 まず一番の特徴は、

五線譜と歌詞解説のセットを用意するということです。

民謡界のお唄のお稽古は殆ど、

縦書きの歌詞に、個々に節付けをしていくというやり方です。

それに対して幸真会では、独自の様式の譜面を使っていますが、

今回は「声」がテーマであり、いずれにせよ独特なそのやり方や譜面では、

会得するまでに時間がかかってしまうので、

殆どの方に馴染みのある、五線譜としたわけです。

慣れない楽曲を唄いながらも、いち早く「声」に思いを致せるようにとの配慮です。

もっとも、

リズムが明確な民謡はともかく、竹物や、リズムが変化するような独特のものを、

五線譜でどう表現するのかといった難しさは、あるのですが、

こういった部分も含めて、自身のアピールと捉えております。

解説や歌詞のセットも、ワークショップ時間内で、とくに説明はしませんが、

参考資料として、お土産にお持ち帰り戴くには、ちょうどいいかと思います。

 次に、

サンプルを4曲としました。

「そんなにたくさん?」と思われるでしょうが、これには二つ理由があります。

一口に民謡と言っても、そのモチーフやシチュエーションは実に様々です。

それらをたった一曲で「日本民謡の声」と括るのは、あまりに無理があります。

そこで、

「子ども、男性、女性」「日常、仕事、非日常」「山、海、お座敷」

といった要素に分けて、それらの主だったものとして、4曲としたわけです。

その曲目は、

天満の子守唄、帆柱起こし音頭、秋田草刈り唄、正調博多節、です。

順番もこの通りに進めていき、難度は勿論、順を追うほど上がっていきます。

 もう一つの理由は、

「会場が板の間である」ということを考慮したのです。

これは、演者もお客様も「お座布団に座ることを強要される」わけで、

イス生活が殆どになった私たちにとって、これはかなりキツイものです。

そこでお客様には、

4曲中、特に唄ってみたい民謡の時は、最前列にお座り戴くよう、

ご案内いたします。勿論4曲ともお唄い戴くのですが、

こうすることでシャッフル状態となり、

言わば合法的に足を伸ばす機会が与えられるというわけです。

 それから、

せっかく「和もの」のワークショップなのですから、

まるで江戸時代の昔にタイムスリップしたかのように、

お着物を着たお師匠さんがいて、

初めと終わりには両手をついてお辞儀をし、

膝を叩きながらお稽古をつけて下さっているかのような雰囲気を醸し出し、

楽しんで戴けるようにしたいと、思っています。

 また、

最終のコンサートの時間では、

皆様に馴染みのある民謡。「あ~聴いたことある」と言われるような民謡。

それらを怒涛のように(笑)立て続けに演奏していきますし、

もっと盛り上がる工夫も、条件が許せば考えております。

 これらの工夫は全て「指導力」を表現する上で、大事なものと考えています。

昨今の世情は、ただいいものであれば売れるという時代ではありません。

いいものを持ち、さらにいい売り方をしなければ、結果は出ないのです。

よしんば、いいものでなくても、売り方が良ければ売れるものですが、

自分の持つ力を最大限発揮した上で、効率よく表現するための工夫を、

怠ってはならないと思います。それが、

より多くの要素に及び、それぞれに結果を出せた時、

初めて「マルチ」と呼ばれるのでしょう。私が目指すのは正に、これなのです。

時として苦手なジャンルも含んでいるので、

やむを得ず、かっこ悪く、歯を食いしばることもあるのですが・・・

初めての「ワークショップ」。

ベストを尽くして臨みますので、どうぞ宜しくお願いします。