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兵庫県立美術館アトリエリサイタルに向けて

兵庫県立美術館アトリエリサイタルに向けて

美術館でのリサイタル

 間もなく、美術館でのリサイタルです。予定頁にもありますように、この度は、ピアニスト金子浩三先生のご推薦を賜ったものです。’02/3/28松方ホールライオンズアクティビティーで初めて共演させて戴いてより、金子先生には何かとお目をかけて下さり、身に余ることと常々思っております。今月のコラムは、それに関する様々をお話ししようと思います。

児玉宝謹の日本民謡

 まず、メインタイトルは「児玉宝謹の日本民謡」です。これは、今年1/29、松方ホールホワイエコンサートで使用したタイトルと同じものです。
三味線弾き唄いや、尺八唄など、所謂「一人」が特色であることと、演奏だけではなく、民謡にまつわるトークやレクチャー的要素をこそ、前面に押し出した仕様であることから、このタイトルを使ってます。いわば、「児玉宝謹ならではの~」というわけですが・・・

 実は、松方ホワイエでの時、この風変わりな(笑)趣向に対する反応が、真っ二つに分かれました。
「いつまでしゃべってんだ」
という意見と、
「あそこまで話せる民謡家はいない」
という意見です。

それでもこの趣向が、僅かずつですが評価されてきていることもあり、この趣きでさせて戴くのが、松方以降今回を含めて4回目になりますが、初めての方に理解を即する意味もあって、念のため今回は、サブタイトル「レクチャー・トーク・DUOコラボレーション」を添付しました。

 レクチャー・トークは、演奏する民謡にまつわる、言わば「解説」です。先の松方ホワイエの後、知人からこんな声を聞きました。
「民謡は、聴こうと思っても歌詞の意味が判りにくく、理解できなかったりする。
そんな状態で、ただ淡々と唄われても、興味が湧くはずもない。だから、
今日のような、解説やそれにまつわるお話しをじっくり聞いた後で唄われると、
より一層理解出来るから、楽しい。」

ただ、松方ホワイエの時は、時間配分を間違えて非常に長くなってしまった反省はあるのですが(汗)このご感想は、正に私の意図する通りのものでした。

解りやすく親しみやすい雰囲気を醸したつもりではありましたが、といって、内容的に決してレベルを低くはせず、じっくり練り上げた結果だったので、(だから長時間にもなったのですが) 今回も、より一層の完成度を目指します。

DUOコラボレーション

 次に、DUOコラボレーションですが、勿論、前述の金子浩三先生とのDUOコラボのことで、第二部からは二人舞台になるわけです。
・民謡に軸足を置きながら、今までやってきたコラボの主だった作品を、
 幾つかずつ演奏していこう。
・それには今まで、ジャズバンドやボーカルなど様々なアプローチがあったが、
 金子先生は幸い、極めてマルチなジャンル対応力をお持ちのピアニストなので、
 この際、思い切ってお願いしよう。
・加えて何故、ジャズ、クラシック、オリジナルの順番なのかも説明しながら、
 自分の思いをお客さまにアピールしていこう。

そんな動機と経緯から、こうなりました。
既に何度か練習を重ねさせて戴いておりますが、やはりというか、流石に、どのような要望でも無理でも、難なくこなして下さるので非常に助かりますし、私などには勿体無いです。

無理と難しさ

 ところで「無理」とは? 何が無理なのか?
 練習の中でやはり感じていることなのですが、尺八とピアノのコラボには、通常の何倍もの気を遣いました。というのは、以前このコラムの場でお話ししましたが、尺八は、他の管楽器同様、気温の変化によってピッチが変わります。

 寒いと低く、暑いと高くなります。かたや、ピアノなどの弦は逆で、寒いと高く、暑いと低くなります。尺八にとってピッチが上がる夏場は、メリを効かせて低く吹くのでなんでもないことですが、冬場、ピアノの方がピッチが高いと、高く維持するしんどさだけが目立ち、もう音楽的な情緒も何もなくなってしまいます。

 この解決法は、尺八にチューニングスライドを装着することなのですが、なかなか制作してくれるところもなく、止む無く、まるで木下藤吉郎の如く(笑) 演奏前、懐に抱いて温めるしかないのです。

 兵庫県立美術館は、コンクリート打ちっぱなしの美術館。前日までのピアノ庫が、どのような状態か分かりませんが・・・

 本番がどうなるか~ 怖い気がします。
 こういった経緯は今回、お客様にも是非理解して戴くよう工夫しますが、個人的に願うことは、将来、尺八愛好者がピアノなど固定調律の楽器とコラボをしようとするその時、再びぶち当たる筈であったこの問題が、既に解決されていて、何の苦労も感じなかったと思えるようになっておくよう、皆様の理解と企業努力を即さねばならないと、いうことです。

 逆に言えば、
「児玉はあの時、何やら変わったことを言った」
という時間が、長ければ長いほど、尺八を取り巻く環境は進化していないとも言えると、いうことなのです。

 かたや。
 三味線なら大丈夫かというと、これがまたそうではなく、違った無理や難しさがあります。
完全音律に慣れた方が聴けば、邪道であり雑音でしかないかも知れません。

 でも、こういう無理や難しさが一種「コラボレーション」の醍醐味とも言えるので、
そこは、それ用の聴き方、ひいては演奏の仕方を、楽しみたいものです。

試金石

 今回の隠れたテーマに「試金石」という意味合いがあります。
様々なコラボがあちこちで聴かれ、観られる昨今、ピアノと和楽器の組み合わせは、あまりお目にはかかりません。恐らく、前述の難しさが原因の一つになってしまっているのかもしれませんが、だとすれば余計に誰かが、こういった場でアピールしていく必要があり、それは極端に言うと「音楽的には今回、不完全であっても」やらなければならないでしょう。
 
 そして今回以後、誰かが何処かで、素晴らしいコラボを実現できたなら、おこがましいですが私は、今回の役割を果たしたと思えるし、心底本望なのです。更なる進化の過程が無事スタートを切り、歩き出したわけですから・・・

 冒頭に注意書きしましたが、更新の日程時間的な条件から今回は、事前のアップになっており、皆様がこれをご覧になられる頃は恐らく、リサイタルが終わった後でしょう。
 
この紙面で書ききれない、或いは敢えて書かない、そして舞台に委ねる部分もあるので、形に残すものとしてはここまでとし、後は、皆様方のご意見を有難く承ろうと思います。そして、
「指導家にこだわる児玉宝謹がリサイタルをすると、こういうカタチになる」
ということを覚えて下さいましたら、私は非常に満足です。

 今後もし機会がありましても、私はやはり、演奏家としてではなく、指導家としての構成にするでしょう。それが私の表現であり、天職なのですから。

 今日のお天気は如何だったのでしょうか?
もしお足元が悪かったら、私の不徳です。お許し下さい。
でもこれに懲りずに、今後とも児玉宝謹を暖かく厳しく、見守って戴きますよう、
お願いを申し上げます。