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解説A13「こきりこ節(富山)」

解説A13「こきりこ節(富山)」

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富山県五箇山地方平村上梨の民謡。現在、全国殆どの中学校生徒の必須教材になっている。

歌詞は、現地では十四節挙げられており、囃子は各節二句の後に唄われる。但し、第三節のみ四句の後に唄われる(下記歌詞参照)

この民謡は「二十四輩巡拝図絵」や「越の下草」などの文献に明記されている点で、来歴由緒が極めてはっきりしている。伴奏は、笛、太鼓のほか、鍬金と筑子(こきりこ)である。筑子とは歌詞にある通り、23,3センチの乾燥した細竹で、これを打ってカスタネットかミハルスのような音を発して拍子をとる。この竹がこれ以上長いと、狩衣などの長い袖に引っかかって「かなかい(邪魔)」だと唄う。平家衆が、都での優雅な生活を思い起こし、烏帽子や狩衣などの衣装をつけて、ビンササラという堅い木片を綴じた楽器や、筑子を打ち鳴らして唄ったり踊ったりして時を忘れていた様がうかがえる。

隣村の利賀村の「こっきりこ」の歌詞には、
”こっきりこの竹は七寸三分
 長いは袖の邪魔になる”
とあるのと比較対照すると面白い。

第四節の「泣く子をいこせ(いくせ)」は、
「泣いている赤ん坊はわたしによこして、踊り場に出掛けなさい」と、若い嫁をいたわる姑の言葉である。

第三節のひよどりは、日陰で鳴く習性があり、太陽の移動で山の陰影が変化するので鳴き声の場所位置によって時刻が知れる。朝、露の乾かぬうちに牧草を刈れと促しているという、科学と直感がマッチした素晴らしい歌詞である。

筑子の竹は 七寸五分じゃ 長いは袖の かなかいじゃ
*窓のサンサも デデレコデン 晴れのサンサも デデレコデン

踊りたか踊れ 泣く子をいこせ ササラは窓の 元にある *

向かいの山に 鳴くひよどりは 鳴いては下がり 鳴いては上がり
朝草刈りの 目をばさます 朝草刈りの 目をさます *

向かいの山を 担ごとすれば 荷縄が切れて 担がれぬ *

月見て唄う 放下の筑子 竹の夜声の 澄み渡る *

娘十七八ゃ 大唐の藁じゃ 打たねど腰が しなやかな *

思いと恋と 笹船に乗せりゃ 思いは沈む 恋は浮く *

いろはの文字に 心がとけて この身をせこに 任せつれ *

(宝謹メモ)
日本民謡の中でも恐らく、最も短くて素朴であるかも知れません。

今風に言えば「リストラされた中央官僚」。でもそこはそれ、やはり平家。その血筋と品格のほどは、歌詞に如実に現れていますね。地元の方言や風習とは一線を画していると感じます。

それと、
これだけ単純な曲では、さぞかしコンクールなどには向かないだろうと思いきや! あの懐かしいキンカン本舗提供の素人民謡名人戦で、一度だけ聴いたことがあるんです。勿論というか、地元出身の初老の男性でしたが、大してゆりこぶしもない唄なのに、地元ならではの雰囲気だけで、かなり立派な点数をゲットされてましたよ。優勝こそしませんでしたが、あそこまで善戦したということは、ある意味優勝に値するのではと思いましたねぇ~

そんなワケで僕は、
こきりこ節と聞けば、時折その男性を思い出すんです。