ストリート
ストリート
去年の出来事ですが、三宮でストリートをした事がありました。平成11年7月24日土曜日の夕方でした。
今回はその時の体験をお話し致します。
かねてより約束していたメンバーは急遽都合が悪くなり、やむなく友人とのDUOになってしまいました。
それも、神戸のストリートのメッカと言われる、三宮の通称「デコボコ山」は既に場所がなく、
三宮交差点の北西側、さんちかの入口前という、いささか変則的な場所になりました。
私自身初めての経験で、それもどちらかといえばイヤイヤ乍らでしたが、
「外で練習している」と思えば、何の抵抗も恥じらいもなくなるものです。
簡単なものですがP.A.をセットして、最初は津軽三味線とキーボードとのDUOでした。
周囲の喧騒の中で、目をつむって一切の計らいを捨て、一心に弾いていました。やがて、
自分の三味線とキーボードの音しか聞こえなくなってきました。集中しているのでしょうね。
暫くしてふと目を開けてみると、人集りになっています。
内心「へーっ」と感心しながら、また目をつむって弾いていました。
10分程で一旦演奏にキリがついて終わってみると、拍手が沸き起こり、投げ銭も2,3千円程入っていました。
名刺を持って話しを求める人もいたり、じっと私の顔を見つめている人もいたりと、結構手応えはありました。
少し休憩して、今度は尺八とのDUOになりました。
しかし一向に手応えがありません。
人目を引くように、ソロでクラシックなども吹いてみたのですが、誰一人として見向きもしませんでした。
今度は再び、津軽三味線。すると人集りができます。尺八は、何の反応もありません。その繰り返しでした。
演奏以外では、亡くなった主人が尺八を吹いていたので懐かしい、とか、
この場所では止めて欲しいというクレームなど、ストリートとして経験する一通りの出来事もあり、
やがて2.3時間の後に、その日は打ち止めになりました。
では、この体験を分析してみましょう。
まず、ストリートそのものの私自身の感想は、
「一度はやってみるべき」という事です。絶対に練習になるし、舞台度胸もつきます。
次に、演奏についての私なりの分析は、
都会は往々にしてストレスの塊なので、
津軽三味線のような、思いを激しく叩き付けるような音には、何かしら引き付けるものがあり、一方、
尺八はインパクトに欠け、しっとりとした波長の長い音は、却って喧騒の中にある現代人のモヤモヤを助長するのでは、
と思いました。
とまれ、この分析の是非はともかく「音楽を売る」「音楽を表現する」という手段について、
私自身、貴重な体験とデータを得た思いでした。勿論、これが今回の件の全てではありませんが、
言葉や理屈を超えた、圧倒的な何かを教えてくれる・・・
それが「ストリート」だと、私は自分で結論付けたのでした。